バイトいやいや月間⑦

 

3月13日 (月)

 

ぼくはふだんA校で働いているが、3月だけヘルプでB校にも行っている。きょうはB校の日だった。A校の塾長が嫌いなのでヘルプで行くB校のほうがかえって気が楽だったりするのだが、きょうはマジで行きたくなかった。マジでトンズラ5秒前、って感じだった。

日曜日は久々に高校の友達と終電近くまで飲んでいたので寝たのが遅かった。4時半とかだったと思う。なので10時に目覚めたときの気分は最悪で、けっきょく14時まで布団から出られなかった。授業は16:50からなので、予習のことも考えると15:30には出社したかった。が、ぼくは14時にベッドから下りた後ものろのろし続け、けっきょく家を出たのは16時前だった。月曜は75分×2&60分×2となかなかハードなのでマジで行きたくなくて、ほんとにトンズラしてしまいそうになった。我ながら根性がなくて情けない。塾に着いたのは16時半だった。

バイトいやいや月間②でも書いたが、B校は規模が大きいということもあってとにかくてんやわんやである。至るところに生徒が溢れ、ほとんど絶え間なく電話が鳴り、保護者が来訪した。もちろん出席簿は見つからず、事前に社員の方から「この範囲でやってください」と言われていたところをやろうとすると生徒から「そこはもう先週やりました」と言われたりした。予習なんやってん。けっきょくその場で考えながら60分の授業を組み立てることになった。いくら中学生の英語とはいえ、30人の生徒を前に即席の解説をするのは骨が折れた。ほかにも生徒がテキストを持ってきていなかったりした。これは連絡が行っていない場合とそもそもまだテキストが配布されていない場合とがあり、どちらにしてもコピーで間に合わせるしかなかった。もうわやや。

こんな感じで明らかに人手が足りていないB校だったが、ぼくはA校よりもこっちのほうが好きだった。それはぼくが適当な人間で何事もきっちりしているA校より空気があっていたからだが、きょう、でもそれってB校が適当だから俺も適当でいいやって思ってて、要するに自分が適当でも許される空気があるからじゃないの、と思ってちょっと反省した。校舎が適当なんだから、バイトの俺が適当でもしゃあないやん。どうしようもないやん。そう思っているからB校のほうが気が楽なんじゃないかと。しかしB校が適当なのも事実なので、そう思ってしまうのもしかたないことではあった。どっちやねん。

 

今回はDucaのライブアルバムを聴きながら書いた。たまに無性にゲーソンが聴きたくなる。ノスタルジーも入ってるかもしれない。ともあれDucaはいい声だった。癒やされた。

 

バイトいやいや月間はわやわや続く。

 

バイトいやいや月間⑤⑥

 

3/10 (金)

 

昨日の反省を活かしてバイトまで遊びに行くことにし、前から行きたいと思っていたカフェへ。ランチを食べて食後のコーヒーを飲みながら本を読む。至福。

カフェを出てからはその足で大好きな公園をぶらぶらし、30分ほどたそがれてからバスに乗って町へ戻った。図書館でオルハン・パムクを借り、帰宅。1時間ほど寝てから出社した。充実した一日だった。

明日学力テストの採点手伝ってほしいから早く来てくれ、無理なら授業後残ってやってくれと頼まれる。当然事務給だ。そういや個別指導塾でアルバイトしていたときもこうやって頼まれることがあった。鬱陶しいことこの上ない。

授業後、塾長が会話を試みてくる。なんか長引きそうだったんで「家族が待ってるんで」と言って足早に退社 (お父さんか)。きっと塾長は仕事しか生きがいのないタイプだ。だからあんなに熱心になれるのだろう。こっちはバイトはあくまでバイトと割り切りたい。ので、講師間で腹を割った話をする気はまったくない。もちろん最低限の情報共有は必要だと思うけれど。塾長は別に言葉遣いが荒いわけでも叱ってくるわけでもないのに、ぼくはどうも好きになれない。彼と馬が合わなくて辞めていったバイトがいるというのもうなずける。

ところでマスクをしていけば煙草のにおいがバレないことに気づいた。べつに完全禁煙というわけでもなかろうが、未成年者と接する者としていちおう、ぼくはバイトの前は煙草を控えていた。でも出社前、スーツ以外の服を着ているときに煙草を吸い、塾内でマスクをすればほとんどにおいを抑えることができる。これからどうしても吸いたくなったらこの方法でいこう。

 

3/11 (土)

 

8時に目覚ましで起床。朝飯を食べたあと再び昼まで眠る。ものすごく眠いのに浅い眠りしか訪れず、何度も目を覚ましながら立て続けに悪夢を見る。大学時代の友達と言い争う夢を見てとても嫌な気分になった。

塾長からラインがくる。春期講習前に校舎ミーティングを行うので以下の4日間のうちどうしてもダメな日、時間帯、その理由を教えろと。いらっときた。なんで理由まで教えなあかんねん。そもそも、ぼくはあらかじめ決められた時間割に従って働いている。時間割によって、ぼくは月火木土の週4出社となった。が、それは今月が始まるよりもずっと前に決まっており、だからこそその曜日以外の空いている日にぼくがプライベートな予定を組むのは当然の権利のはずだ。ぼくは金曜日は友達と登山に行く予定だった。唐突に連絡してきてあまつさえ「理由を言え」。これがまだ社員に対してならしかたがないことなのかもしれない。理不尽だとは思うけれど、おそらく社会人とはそういうものだ。しかしぼくはただのいちバイトである。もちろんバイトにだってある程度の責任はあるけれど、あくまで「ある程度」の責任だ。バイトに社員並の勤労を求めるのは間違っている。社員を雇わない/雇えない会社が悪い。

これは研修のときも思った。というのは研修ではほかの校舎に授業見学に行かされるのだが、研修費どころか交通費さえ出ないのだ。ぼくは2つの校舎に見学に行った。ちょうど受験シーズンで、繁忙期にのこのことやってきたぼくは煙たがられた。それだけでもうんざりなのに、やれそこの塾長に模擬授業を見てもらえ、終わったら必ず感想をラインしろだの、次々と面倒な命令が飛ぶ。

それでも研修のときは必要なことだからと折り合いをつけた。が、今回は「理由を言え」と言われてかなりいらっときた。確かにミーティングは重要だろう。しかし「重要だから出席しろ」と迫るのは間違っている。どうしても出席させたいならもっと前の段階で伝えておくべきで且つ給料を出すべきだ (交通費さえ出ない)。

とりあえず返事はしないでおき、夕方まで家で本を読んでから出社した。予習は終わっていたが、採点の手伝いをするために授業より1時間早く行った。頼まれたのは中1〜中3の国英の採点。中1のテストは2種類あった。これが思っていたよりも大変で、全然終わらなかった。授業中も生徒に問題を解かせているときなど折を見て採点したが、けっきょくすべての授業が終わった後も塾に残ってやっていくことになった。だいたい1時間半かかってすべての採点を終えた。

なぜ塾長が嫌いなのかがわかった。いちいち感じが悪いのだ。たとえばぼくが生徒に問題を解かせている間に採点しようとテスト用紙を取りに行くと、塾長が勝手にそれを漁っていて「この右と左で分けているのは何で分けてるの?」と聞いてくる。別に意味はなく、単に置くところがなかったからそう置いていただけだ。そう応えたら「意味の無いことしないでくれる」と言ってきた。そもそも、ぼくはまだ採点のやりかけで、当然終わったらちゃんと番号順にまとめて渡すつもりでいた。それを勝手にいじったのは塾長のほうなのだ。思わず固い声で「まだやりかけだったんで」と言うと無視された。ほかにも書類を探していたときに邪魔だったのか通りすがりにどんとぶつかってくるなど、いちいち感じが悪い。反射的に脛を蹴りそうになった。

帰路につきながら、ぜったい辞めてやる、と思った。

 

ところでこの文章を書いているのは12日 (日) である。本来ならこのエントリも昨夜書くつもりだったが、帰宅したのが23時過ぎだったし、晩飯食べた後風呂にも入れずにベッドに倒れたのでいま書くことになった。一晩が経って、少し冷静になっている。

ぜったい辞めてやる、と昨夜は思ったが、このバイトが短時間で多く稼げるのも事実だった。集団指導は大変なだけあって時給も高い。それにどのバイトだってぜったい大変なのだ。ぼくができそうなバイトで且つ効率的に学費を稼ごうと思ったら、塾講以外に思いつかない。

昨日のライン、「火曜日は別校舎での授業、金曜日はプライベートな用事があるので出席できません」と送るつもりでいたが、ここはも少し大人になることにし、金曜日については「大学の用事があるので」と言っておくことにした。以前、教育実習の時にある教師 (威圧的な体育教師) の言い分に真っ向から反論して揉めたことがあったが (以後実習が終わるまで無視され続けた。ほかの教師にもあいつは反抗的だ、だめだと言い散らしていたらしい)、その話を聞いた友達のSは言ったものだった。「俺だったらかえって扱いやすいやつだって思うけどな。そんなの、内心で軽蔑しながら、表向きは従ってやればいいんだよ」

今回、ぼくは自らの青臭さや子どもじみた顕示欲を抑え、少しだけ大人になることにした。

 

『お疲れさまです。ミーティングの件ですが、火曜日は○○校での授業があるため、金曜日は一日大学の用事があるため出席できません。水曜日、木曜日であれば出席可能です。よろしくお願い致します。』

 

バイトいやいや月間はまだまだ続く。(もういやだ)

 

バイトいやいや月間④

 

3/9 (木)

 

きょうは考えるべきことがたくさんある。

ぼくは昨晩深夜4時半に寝入ったせいもあって陰鬱な気分で目覚めた。10時前だった。陰鬱な気分だったのには少なからずきょうがバイトであるということも関係していた。寝たら明日が来てしまう。明日はバイトだ——といったふうに。

目覚めてからもまったく起き上がれなかった。けっきょく14時までベッドのなかでスマホをいじっていた。久々のメイン校舎勤務だからか、きょうから3連勤だからか——とにかくバイトに行きたくなかった。けっこう本気でこのまま連絡せずにトンズラしてしまおうかと思った。

が、根が真面目なぼくは14時にどうにかからだを起こし、YouTubeで将棋実況やラーメンズのネタを見たりしながらインスタントつけ麺を食べ、30分ほどうとうとしてから出社した。

 

考えるべきこと① バイトに対する意識を変える必要がある

ぼくはまったく根性のない人間で、部活もサークルもバイトもろくに続かず、どれもせいぜい1年ほどでやめている。家庭に恵まれたおかげか、生まれた時からぼくにとっていちばん落ち着く場所は家であり、また生活の中心も家であった。かつて恋人がいた時でさえこれは揺るがなかった。恋人と会って家に帰るのが遅くなる日が続くとぼくは不安になり、次第に恋人の顔を見るのさえいやになった。

なので今の、バイトが (定期的に) 組み込まれた生活にはうんざりしている。うんざりというか、落ち着かない。たとえば18:30からバイトがあるとする。実働時間は3時間で、遅くとも22時半には退社できる。24時間のうちの4時間。たった1/6だ。

でもぼくの場合は違う。18:30からバイトがある。そう考えただけで何もできない。落ち着いて本を読むこともできなければ、遊びに行くこともできない。たとえ18時半からであろうが19時半からであろうが、実働が3時間であろうが、ぼくにとってそれは〈バイトの日〉である。〈バイトの日〉。それはバイトがあるというだけの日で、ほかのことは何もできない日だ。

退社して家路につきながら、このバイトに対する強迫観念にも似た意識を変えなければいけないと思った。つまり、〈バイト〉を生活のなかの当たり前の要素として捉える。それが出来なければせめて、〈バイト〉を日常とは切り離して考える。18:30からの3時間だけ別の時空へ行くと考えればいい。

極端な話、仮にバイトが18:30からなら、朝5時に起きて奥多摩の山に登ってから出社することも可能なのだ。いやさすがにそんなことはしないけれど、でも行きつけのカフェで本を読んだり近くで映画を観たりしてからバイトに行くのはぜんぜん可能だろう。とにかくこのままの意識でいるとしんどすぎる。今月は少なくとも週4でバイトがあるのに。それに出社までうだうだ悶えている時間がもったいない。意識を変えよう。

 

考えるべきこと② バイトがもたらしてくれるもの

ぼくは大学院の学費を払うためにバイトを始めた。つまり必要に迫られて働いているわけだ。上にも書いたようにすっごい嫌だが、しかし必ずしも悪い面ばかりではない。まず、お金を使うことに対する罪悪感がなくなる。お年玉でもらったお金を崩していたときのような心苦しさはなくなった。そしてこれは大事なことだが、精神のバランスが保たれる。これだけ嫌だ嫌だ書いてきて矛盾しているようだが、バイトを始める前、プーの大学五年生として日々を暮らしていたときのぼくは自己否定感が跋扈し、精神はだいぶ荒みきっていた。何のために生き延びているのかがわからず、何の活力も湧かなかった。大学院進学が決定したこともあるが、いまのぼくは将来の希望 (文章で名をなす、もしくは教授になる) に胸を明るくし、読書や執筆も依然と比べたら旺盛である。

きょうだってバイトがなければ一日中だらだらしていただろう (もっとも、バイトがあったから行動に移れずだらだらしていたのかもしれないが)。無駄に費やしてしまう一日も「少なくとも労働した (金を稼いだ)」という日にしてくれる。バイトにはそういう面も確かにある。

 

考えるべきこと③ こうして歯車の中へ

きょうは塾長が休みだった。生徒が帰った後、社員の方と少し話をしたのだが、塾長はぼくのことを評価してくれているらしい。社員の方にも「授業うまいよね」といわれた。お世辞だとは思うがうれしかった。そしていまぼくが担当しているコマのために雇われたバイトが何人か立て続けに辞めていったことを教えられた。集団指導に耐えられなかったり塾長と馬が合わなかったりしたらしい。○○先生 (ぼくのこと) はまじめにこなしてくれていて助かっているといわれた。こうして人間は組織に組み込まれていくのだなと思った。

 

考えるべきこと④ ぼくはウエルベックが好きだ

とはいえ文学の徒として頑なに反骨心は持ち続けたいと思う。ぼくの本業はあくまで学生、文学だ。履き違えないように。

 

(授業はまあ無事に済んだ。バイトいやいや月間はまだまだ続く。)

 

バイトいやいや月間③

 

3/7 (火)

 

今日はぜんぜんいやじゃなかった。

もともと中○国×2だけだったので気が楽だったし、いざ出社すると「まとめて1回の授業でやってもらうことになったから1コマだけでいいよ」といわれた。どういうことかというと、クラスAとクラスBに分けて同じ内容の授業を1コマずつする予定だったのが、クラスAとBを1つの教室にまとめて授業することになったため本来の2コマから1コマやればいいことになったわけだ。しかも給料は2コマ分だしてくれるという。塾長には後光が差していた。

というわけで1コマだけ国語の授業をして退社した。今回はハプニングもなく、予習していた範囲がそのまま授業範囲となったので、自分でもまあまあ納得のいく授業ができた。あとやっぱ国語がいちばんやりやすいと思った。ぼくはこれまで国語と英語、どっちかやってくれと言われたら英語を選んでいた——というのは明確な基準がない国語と比べれば英語のほうがずっと教えやすいと思ったからだ——が、授業をする際にはいかにその教科の知識があるか、付け焼き刃ではない知識があるか、自信を持っているかが肝要なので、けっきょくぼくの場合はすなおに国語を教えたほうがいいのだなと思った。

出社したのは19時前、帰宅したのは21時だった。明日はバイトがない。いまうきうきでこの文章を書いている。ああ、やっぱふだんの校舎よりこっちの校舎のほうがいいなあ。融通きかせてくれるし、塾長は若くてハンサムだし、雰囲気も明るいし、事務の女性社員は溜息ばっか吐いてるし (社会人の闇……)。なにはともあれ、ふだんの校舎より馬が合うのは確かだ。

 

今回は『Abbey Road』を聴きながら書いた。「Come Together」はやっぱりかっこいいなあと思った。バイトいやいや月間はまだまだ続く。

 

バイトいやいや月間②

 

3/6 (月)

 

8時に起床。バイトに行きたくなさすぎて悶える。そのうち二度寝

授業は16:50から。前日の夜に予習済みだったが、いちおうもう一度だけ確認して15時半に出社する。

「私、うみやと申しますが」「ああ、お待ちしていました」

月火はふだんとは別の校舎にヘルプとして行くことになっている。さっそく本日の授業範囲の確認。確認も何も範囲は本社が決めるカリキュラムに沿っているはずなんだけど、この前のような例もあるので念のため。

「先生は理系はできますか?」と聞かれる。この時点で嫌な予感ぷんぷん。

聞くと、講師の一人が急に来られなくなったらしい。もともと小○国×2、中○英、中○国の予定だったが、講師不足のため急遽小○国&小論文、中○英、中○英が割り当てられる。社員の方は「本当にどたばたしててすみません」と平身低頭だ。見たところまだ若い。たぶんぼくとそう変わらないんじゃないだろうか。大変だなあ、と思う。

例によって予習が無駄になり、しかも授業が始まるまでの1時間で小○小論文と中○英の予習をしなければならなくなったが、もはや慣れつつある。

 

いざ授業が始まったら始まったで、慌てて予習した範囲さえも間違っていたことが判明したり (講師間の連絡不足)、生徒がみんなテキストを持って来ていなかったりしたが (生徒への連絡不足)、臨機応変にどうにか乗り越える。ほかにもぼくが渡されていたテキストが古くて生徒の持っているのと違っていたり出席簿が紛失していたりしたが、なんとかなった。生徒数はふだんの校舎の3倍くらい多かったが、ほとんどの生徒がけじめがついていて、授業はずっとやりやすかった。この前塾長から言われたことを受けてこれまでよりじゃっかん厳しめに振る舞ったのも奏功したのかもしれない。

 

21:30にすべての授業を終える。22時過ぎに退社。

今回は労働時間も長くいつも以上にどたばたしていてすごく疲れたが、心理的なストレスはふだんよりも少なかった。今日ヘルプでほかの校舎に行ってみてわかったけど、うちの校舎はかなりきちんとしている。褒められていいレベルだと思う (まあ、校舎の規模が小さいから成り立ってるんだろうけど)。そしてそれが故、適当なぼくとはあわない。いや、どたばたはないほうがいいんだけどさ。でも、なんていうか、職場の雰囲気としてはこっちの校舎のほうがずっとあってそうだ。ま、一日働いたくらいで決めるのも早計だけどさ。

明日もここの校舎で授業。予習は明日 (もう今日) します。

 

ものすごく珍しいことに、なぜだか無性にミスチルが聴きたくなって、だからこの文章は1992-1995を聴きながら書いていた。「Tomorrow never knows」とか聴くのいつぶりだろう、と思ったけどよくよく考えたら先月聴いたばかりだった。友人のコージはミスチルとサザンが大好きなのだ。

ミスチルとかサザンはいつ聴いても懐かしいからいいなあと思った。

 

バイトいやいや月間はまだまだ続く。

 

バイトいやいや月間①

 

3/4 (土)

 

18:30から授業。16時前から予習をし、17時半に家を出て18時に出社する。

「こんにちは」「はい、こんにちは」

デスクには塾長しかいない。時間割で見る限り、どうも土曜日はぼくと塾長の二人きりのようだ。クラスを担当するもう一人の先生から伝えられていた本日実施分の漢字テスト&単語テストをプリントし、いちおう板書案を確認する。

冷や汗が止まらない。

以前ぼくが渡されていた板書案と範囲が違う。前回ぼくがその板書案を渡された時はまだ今月分の板書案が回ってきていなかったため、とりあえず去年ので間に合わせていたのがずれてしまっていたらしい。これから小○理科、中○国英、中○英と3時間ぶっつづけで授業するのだが、理科を除いて全て板書案がずれていた。板書案がずれていたということは、授業でやる範囲がずれていたということである。家でしてきた予習はなんだったんだ。ふざけんな。……もう時間もない。とりあえず正しい板書案をプリントだけし、小○理科の教室に向かう。

 

小○理科

今までに国語を教えたことがあるクラスだったので、「先生理科もできるの?」とみんなから聞かれる。できません、と胸の中で応えつつ、「先生は何でもできます」と答える。「じゃあどの教科が得意?」「うーん、好きなのは国語かなあ」「好きなのじゃなくて、得意なの!」子どもにはごまかしがきかない。「……まあ、やっぱり国語かなあ。……というか、そんなのはどうでもいいから授業始めるよ!」

今日の範囲は「こん虫」について。理科だけは板書案がずれていなかったため予習済み。つい2時間ほど前に知ったばかりの知識をさも当然知っていたかのように話す。ちょっぴり自己嫌悪。でもこれくらいのことは個別指導塾でバイトしていた時にとうに慣れっこになっている。

もともと生徒たちを知っていたということもあって、わりとつつがなく範囲を終了する。少し時間が余ったので授業の最後にはテキストもノートも閉じてもらい、今日やった範囲からクイズを出す。「こん虫のはねは、あたま・むね・はら、どこについてたっけ?」「はら!」元気だけはいい。ちなみに正解はむね。

 

中○国語

中○と対面するのは初めて。ゆっくり自己紹介でもしたいところだが、前のコマの塾長がだいぶ延長していたので簡単に名乗るだけにし、さっそく漢字テスト。テスト中も注意しないと騒ぎ出す小学生と比べ、中○はさすがにおとなしい。おっ、と思う。

答え合わせをさせてからマッハで今日の範囲へ。短い小説文が2題。とりあえず15分で1題目を解いてもらう。生徒たちが問題を解いている間、ぼくも必死で本文を読み問題を解く。小問2だけ間違えていた。しかし答えを見ても納得できない。絶対おかしいと思う。少なくともぼくの抜き出したところのほうがより正解にふさわしいと思う。国語の問題を解いているとしばしばこういう事態に出くわす。さて、どう解説するか。

15分が経つ。いちおうみんな解き終わったみたいなので、適当に指名して答えさせる。時間がない、というか既に延長してしまっているので、ほとんど板書せず口頭で説明する。板書案が汚くてぜんぜん読めなかったせいもある。が、まあ、もともとそんなに板書案は信じていない。授業範囲を知るためにプリントしているだけだ。

小問2に関しては、けっきょく「ぼくも間違えた。が、こっちを抜き出しても正解だと思う。ていうか、こっちのほうが適切だとすら思う」と正直に打ち明ける。こうなると当然、そう思う理由も説明しなければならない。というわけでテキストに書いてある答えとぼくが抜き出した部分を比較し、その意味することがまったく同じであること、具体性がある点でぼくの抜き出した部分のほうがより適切だと思われるが、テキストの答えも間違ってはいないということを納得させる。正誤に関してはどちらも丸ということにした。

本来ならば2題とも終わらせることになっていたが、1題目が終わったところでだいぶ時間がオーバーしている。窮余の策として2題目は宿題にし、次回授業の冒頭で解説することにした。

 

中○英語

けっこうな分量書いたのだが、それゆえ内容がかなり具体的になってしまったので割愛する。

 

中○英語

生徒数が少なく、今まででいちばん静かな授業であった。ぜんぜん反応がないので、これはこれでやりにくい。一人ひとり指名して答えてもらいつつ、なんとか反応を引き出せないかと腐心する。範囲は動詞の過去形 (規則変化) で、こちらも特に問題なし。

 

授業後

塾長からぼくの授業について言われる。丁寧な口調で、「授業と関係のない雑談を許すな」「もっとポイントを伝えて、一回の授業で少なくとも一個だけは持ち帰れるようにしろ」と言われる。ポイント云々に関しては授業の終わりにクイズ形式で復習させたり何度も同じところを繰り返させたりしたんだけどなーと思いつつ、素直に「はい」とうなずく。雑談云々に関してはこのエントリに書いた。でもまあ、お金を貰って働く以上、言われたことはしないとなと思う。

以上のことは小○の授業を覗いた感想として言われたのだが、なるほどなと思わされたのが「小学生には勉強を教えるだけじゃなくてしつけを教えることも塾の仕事だから」と言われたことだった。保護者はそこにも期待していると。実際、塾長曰く「厳しくしつけた」中○の生徒たちは皆メリハリがきいて、授業がしやすかった。しつけを厳しくしなければならない、という教義は肌に合わないけれど、それが塾に求められているというならば念頭に入れるべきなのだろう。

そのほか、もっと生徒たちと (体験生とは特に) コミュニケーションを取れと言われる。これはまあ、確かに。反論の余地もない。あと講師間でもコミュニケーション取れと言われる。特に同じクラスを折半する講師とは。これもまあごもっともなんだけど、グループラインだけでもきついのに、個々で連絡取ってくれってそりゃきついっすよ〜。だってねえ塾長、おれ塾講の空気苦手なんすよ。ということは塾講師も苦手なんすよ。そんなまめに連絡取り合えって言われても無理っすよ〜とは言わず、「はい、はい」と返事だけはしておく。早く帰りたい。

次回の板書案をプリントしつつ、塾長が春期講習について話すのを聞く。早く帰りたい。ダメと言わなかった日はすべて入れられるようだ。ということは、月末はもっときつくなるってことか? 早く帰りたい。「大学院のスケジュールっていつわかる?」とも聞かれる。「いやあ、たぶん月末までわからないと思います」「大学とか大学院ってさ、ほら、講義はあっても最後のほうだけ出席してれば単位貰えたりするでしょ。だからさ、そういうのも含めてどれくらい忙しいか、そういう感覚だけでも教えてもらいたいんだけど。だれか先輩とかいないの?」「いないんです」「そうか。こっちも早くスケジュール組みたいから、わかったらすぐ教えて」「はい、すみません」

遠回しに「大学院なんてどうせ楽なんだしもうスケジュール組んじゃっていい?」と言われたのだろうか。あと申し訳ないがぼくはいまけっこう本気で文学したいと思ってるので、週2より多くは働く気ないです。早く帰りたい。というか個別指導塾時代も思ったけど、塾っていう組織は自転車操業すぎる。うちの塾はその中ではすごくまともなほうだと思うけど (生徒や保護者へのフォローもかなりやっているし)、それでも常にてんやわんやしている。バイトが多いからだろう。

 

22:30退社。電車の乗り継ぎが悪く、23時半に帰宅する。

母が用意してくれていたざるそばと寿司を白ワインで流しこみ、30分ほど将棋実況とラーメンズのネタを見てから風呂へ。J・M・クッツェー『恥辱』読了。すごい本だった。今のところ2017年ベスト。いずれ感想を書くかもしれない。

 

バイトいやいや月間はまだまだつづく。

 

三頭山に登ってきた【登山レポ】

 

3月1日 (水)奥多摩エリアの三頭山に登ってきました。

武蔵五日市駅からバスで都民の森まで行きそこから登り始めるというのがメジャーなルートですが、もう少し手応えがあったほうがいいよねということで、奥多摩駅からバスで小河内神社まで行き、浮橋奥多摩湖を渡っていくヌカザス尾根ルートで登ることに。

 

7:30 奥多摩駅

7:38 奥多摩駅発 (留浦経由小菅村行き) (バス乗り場2番線)

8:08 小河内神社着 → 浮橋へ

 

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噂に聞く奥多摩湖の浮橋 (通称ドラム缶橋)。わりとゆれる。

 

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浮橋を渡ったら登山口まではしばらく車道。道標があるので迷う心配はないです。道なりに進んで左側に登山口。

 

8:30 登山口

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怒られそうなので小さな声でいいますが、ぼくたちはアイゼンを持っていません。靴はいちおう登山靴ですが、冬山対応ではない。

登り始めてしばらくの間は心配していた雪はなくすいすい登れたのですが、1000m超したあたりから霜が目立つようになりました。

 

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枯枝も凍る。

 

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山頂に近づけば近づくほど白くなり、ぼくたちが「のわっ!」と叫ぶ回数も増えていきます。まあ結果からいえば怪我もなく登れたのですが、1000m超えてからはアイゼンがあったほうが楽だったろうなあと思いました。凍ってる道は神経つかう。

 

11:30 山頂着

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わりとほのぼのした山頂にベンチが4、5台。シーズン中や休日は混雑するんだろうけど、この日は数組しかいなかった。

 

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恒例の光景。

 

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ホットサンド! 今回の具はトマト&ベーコンとキーマカレーの二種類。

 

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食後のおつまみ。

 

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山頂からは富士山も見えた。

 

毎度ながら山頂ランチが幸せすぎてこの日もけっきょく山頂に1時間半もいました。ホットサンド食べてコーヒー飲んで、おつまみ食べてワイン飲んで紅茶飲んで……(どんだけ飲むねん)。もちろん登山それ自体が楽しくてやってるわけだけど、このお昼ご飯の楽しみ (カップヌードルとかホットサンドとか) がなければこんなにはまってなかったと思う。それくらい山頂ランチの幸福感はでかい。

 

13:10 下山開始

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都民の森へ下ります。こっちのルートは道が整備されていて歩きやすい。

 

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ただしつるっつる。

 

道程には三頭大滝があります。

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滝見橋から望む。

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ほとんど凍ってました。龍のよう。

 

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ここまで来れば後は流し。森林館のほうへ向かいます。

 

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嗚呼、でとっくす。

 

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14:40 都民の森着

 

アップダウンが繰り返されるヌカザス尾根ルートと比べて下りは楽ちんでした。エントリ冒頭にも書いたとおり、三頭山はこの都民の森から山頂までピストンするルートがメジャーなんですが、さもありなんと思いました。たしかにこの気楽さで1500mの山に登れるのは魅力だ。

 

とまあ、ここまではよかったんですが。

都民の森へ下山し、いざバスに乗って帰ろうとしたらまさかの「3月は平日運休」の文字。12月〜2月に至っては全日運休だったそうです。し、知らなかった……。グーグルマップで調べたら最寄りの武蔵五日市駅まで30km7時間とかでてくるし、どうすんだこれ……と途方に暮れてもしかたないのでKくんがゆいいつ開いていた土産屋の店主に聞いた。すると、ここから3kmのところにある「数馬の湯」が送迎サービスをしているという。さっそく電話したところ、10分で迎えに行くとの返事。助かった!

 

迎えに来てくれたからいうわけじゃありませんが、数馬の湯は内風呂の数も豊富で山の木々が眺められる露天も素晴らしく、サウナや水風呂も設えられていてとてもいい温泉でした。湯上がりに飲むフルーツ牛乳のうまさよ

ちなみに数馬の湯からは武蔵五日市駅行の路線バスが出ており、そのおかげでぼくたちも無事町へ戻ることができました。本数はだいたい1時間に1本。数馬の湯から武蔵五日市駅までは約1時間です。

数馬の湯 公式サイト 東京都西多摩郡檜原村の温泉

 

感想

二ヶ月ぶりの登山でしたが、やっぱり山はいいなあと。

登りながら何がこんなにも楽しいのだろうとぼんやり思っていたんですが、まずは非日常ということですね。ふだん行かないような山の奥深くに分け入っていき、ふだん耳にすることのない沈黙を聴く。ふだんはぜったい起きない朝5時とかに起きて、朝からからだを動かす。そしてからだを動かした後の山頂ランチ。なんて健全な一日。ふだん鬱屈している心もからだも、少しずつほぐれていきます。

また、ぼくはいつも親友 (とぼくが勝手に思っている友達) といっしょに登っていますが、そうした気の置けない友達と心ゆくまでだれにも邪魔されずに話せるのも登山の魅力かなと思います。もちろんひとりの登山もまたべつの魅力があるはずですが、今のところはぼくはこの気の置けない友達との差し向かいの登山が好きです。

卑近な視点でいえば、お金がかからないのも登山の魅力ですね。交通費 (と温泉代) しかかからないので、ほかの遊び、たとえばボーリングだったり飲んだりするのと比べたら格安です。しかも朝5時から夕方まで楽しめる。なんというコスパ

大自然のもとで自分の悩みがちっぽけに思えたり、いちど現実を離れることでふだんの自分が客観的に見られるような気がするのも山の素晴らしいところだと思います。

というわけで、社会人のKくんと今月週4でバイトが入ってるぼくはまた4月に非日常へ登ることを固く約束し、「あした職場に隕石落ちないかなあ」と呟きながらわかれたのでした。

 

……はぁ、バイトいやだなあ。早く4月にならないかなあ。