『騎士団長殺し』を読んでいない男

 

ぼくです。

読んどきたいんですけどね、金が無いんです。

 

ところで、本好きのあいだでは村上春樹はけっこうデリケートな話題で、というのはうっかり「春樹最高!」っていったらガチ勢から鼻で笑われる可能性があるし、だからといって「春樹ね……はいはい」みたいな冷笑スタンスでいくとせっかく仲良くなりかけた女の子に嫌われてしまう可能性があるからです。このへんの「村上春樹にどう接すればいいか問題」は『バーナード嬢曰く』でバーナード嬢こと町田さわ子も取り上げていますね。

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バーナード嬢曰く。: 2 (REXコミックス)

 

で、この前大学院の演習でたまたま春樹の話になって、初回だったこともあり、自己紹介がてら自分がいちばん好きな春樹作品を挙げていこうってことになったんですよ。そのとき学生はぼくを含めてたしか七人いて、残念ながら(?) ひとりもハルキストはいなかったんですが、そのときもやっぱり腹の探り合いになり、それぞれがおそるおそる他人の春樹観を探っている感じがおもしろかったです。

 

ちなみに、そのときに挙げられた作品は、

・『風の歌を聴け

・『1973年のピンボール

・『羊をめぐる冒険

・「4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」(2票)

・『アフターダーク

・「めくらやなぎと眠る女」

 

でした。初期三部作が出そろうラインナップ。というか、『アフターダーク』以外はすべて初期作です。しかも短篇が多い。理由としては、「あの比喩過剰で冗長な文章が心地良く読めるのは短篇が限界」というのが主でした。ぼくはそこんところはあんまり気にならなくて、むしろあんな文章だからこそかる〜く読めて長篇向きだと思っていたので意外でした。まあ、とはいえぼくも短篇の「めくらやなぎと眠る女」を挙げたんですけどね。

めくらやなぎと眠る女

めくらやなぎと眠る女

 

 

「めくらやなぎと眠る女」は年下のいとことバスに乗って病院に行き、いとこの診察のあいだぼーっとする、っていうただそれだけの話なんだけど、バスに乗っているあいだのなんとなく奇妙な感じ、違和感の描き方とか、診察が終わるのを待っているあいだの無聊の描き方、昔友達の彼女の見舞いに行ったときの回想へのつなぎ方なんかがうまくて、これといった筋があるわけでもないのに引き込まれてしまった。

ついでに蛇足で書いとくと、これまでぼくが読んだ中で逆にいちばん駄作だと思った春樹作品は『海辺のカフカ』です。中身の無い黙説法——思わせぶりに書いておいて、けっきょく何もない——つまりは村上春樹のわるいところが存分に出てしまった長篇だと思いました。図書館に来るジェンダーおばさん二人組も、確かにああいうひといるけど、でもあんな描き方ってどうなのと思います。(ところで、ジェンダーにうるさい女子大生にかぎって春樹が好きだったりするのはなんで? むしろその観点では嫌われる作家だと思うんだけど)

長篇でいちばん好きなのは『ノルウェイの森』です。文学的に優れているのは『ねじまき鳥クロニクル』だと思うけど、エンタメとしてすごくおもしろかった。緑派。

ノルウェイの森 文庫 全2巻 完結セット (講談社文庫)

ノルウェイの森 文庫 全2巻 完結セット (講談社文庫)

 

 

…… いまいち何が書きたかったのかわからないエントリになってしまいましたが、要は『騎士団長殺し』を読む金が無いって話です。おかげで文学誌上で繰り広げられていた『騎士団長殺し』の書評ロワイヤルにもついていけなかった。友達の話によれば、「二重メタファー」なんていうアツイ単語も飛び出すらしい。ああ、いまこうやって書いてたら、なんだか無性に読みたくなってきた。

はやくブックオフで半額にならないかな……

 

風の歌を聴け (講談社文庫)

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カンガルー日和 (講談社文庫)

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騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

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