文系男子による好きなアルバム紹介


 ここのところ登山の話題ばかりだったので、たまには音楽の話でもしようかと。てなわけでいきなりですが好きなアルバム紹介。「オススメの」ではなく、あくまで「好きな」アルバム紹介です。特にマイナーなアルバムを紹介するわけではないので、「最近の大学生はこんなん聴いてるのか〜」みたいに思って読んでいただければ幸いです。 

松任谷由実『PEARL PIERCE』(1982)

PEARL PIERCE

PEARL PIERCE

 


 好きなアルバムと聞いて真っ先に思い浮かぶのがこれ。初っ端から大学生感はゼロですが、それでも好きなんだからしょうがない。
 都会のOLの暮らしをイメージして編まれたというアルバムで、ユーミン自身いちばん好きだというアルバム。季節は夏。OLの夏休み。
 個人的には、昔祖父母の家に帰省する時に車で聞いていたため、パール・ピアスといえば高速道路のイメージがあります。今でも高速に乗ると聞きたくなる。特に夜。
 どの曲も好きですが、とりわけ最初の「ようこそ輝く時間へ」、そこからの「真珠のピアス」、あとは「フォーカス」なんかもロマンティックで大好きです。とにかく洗練されたアルバム。ユーミンと正隆のセンスがいかんなく発揮された名盤。

松任谷由実『DA・DI・DA』(1985)

DA・DI・DA(ダ・ディ・ダ)/松任谷由実

DA・DI・DA(ダ・ディ・ダ)/松任谷由実

 

 
 ユーミンからあと1枚だけ好きなアルバムを挙げるとしたら、『THE GATES OF HEAVEN』と迷うところだけどおそらくはこっち。
 さっき紹介したパール・ピアスとは対照的に、こちらは冬のアルバム。曲もパール・ピアスがどちらかといえば地味で渋好みなのに対し、「シンデレラ・エクスプレス」「青春のリグレット」など有名な曲 (もっとも、ユーミンの曲はたいてい有名だともいえるけど) が多い。
 パール・ピアスには洗練された都会のOLの暮らしが描かれているけれど、ダ・ディ・ダは僕の印象で言うならば、もっと身近な、街のどこにでもいる若い男女の暮らしぶりが描かれているように思います。このアルバムで僕がいちばん好きなのは「月夜のロケット花火」。これはユーミンでは珍しく男女の歌ではなく、それこそどこにでもいる若者たちの歌。就職を控えた若者たちが最後の青春を謳歌すべく防波堤でロケット花火を打ち上げ、それを見た「私」がいつまでも「子供でいたい」と願う。そういう曲。
 大学4年生ともなれば誰しも共感せざる得ない曲です。まあ、僕はあと1年行くんですけどね。

andymoriandymori』(2009)

andymori

andymori

 

 
 やっと大学生っぽいアルバム。andymoriの1stフルアルバム『andymori』。
「なんで『ファンファーレと熱狂』じゃないんだ」という声がファンから聞こえてきそうですが、もちろん『ファンファーレと熱狂』も大好きなんですが、どれか1枚だけを挙げるとするなら、ファンファーレと比べてコンセプト感では落ちるものの、よりandymoriのエッセンスが詰まったこちらかなと。そもそも僕がandymoriにハマるキッカケとなった曲が「モンゴロイドブルース」だし、「青い空」「ハッピーエンド」なんかはそれこそandymoriらしさがぎゅっと詰まった曲だと思うし。
 それに何より、僕は「Life Is Party」が異常なほど好きなんですよね。エッセンスという意味ではこれほどandymoriが濃縮された曲もないと思うし、もっといってしまえばエッセンスがどうこうとかもうどうでもいいほどに本能で好き。
 MVもたぶんいちばん好きです。これほど曲の世界観を巧みに表した映像もそうそうないのでは。

Predawn『A Gorlden Wheel』(2013)

A Golden Wheel

A Golden Wheel

 

 
 その独特な音楽世界をしばしば童話に喩えられるPredawnの1stフルアルバム。タイトルの『A Gorlden Wheel』は直訳すれば「金の輪」で、これは小川未明の童話の題名。
 なんていうのかな、楽器とか録音方法とかの詳しいことは僕にはわからないんですが、ひとつひとつの音が丁寧。どの曲もアーティストが心から楽しんで時間をかけてつくっているのが聴いてて伝わってくる。曲調は最初に書いたとおり童話の世界をイメージさせる夢幻的な感じなんだけど、静かな旋律と囁きかけるようなヴォイスもあいまって、聴いているとふしぎに落ち着く。ちなみにアーティスト名「Predawn」は「夜明け前」という意味。つまりは「未明」。でも、僕は夕方の陽が落ちかけている時間帯に聴くのも好きです。このアルバムの曲だと「A Song for Vectors」「Drowsy」とかは特に。1日出掛けて夕方家に帰る時とか、ぴったりです。

ユメオチ『これからのこと』(2012)

これからのこと

これからのこと

 

 
 満を持して登場。言わずもがなこのブログのタイトル元。ブログのタイトルを考えていた時、思いつくと同時に即決しました。これほどしっくりくるタイトルもないだろう、と。
 CDのブックレット等を見ていると作曲、編曲などでちょくちょく目にする行達也がすべての作曲を担当。ヴォーカルは現在sugar meとして活動中の寺岡歩美。
 詞、旋律、ヴォーカル、どれを取ってもたまらなく好き。特に詞には心を揺さぶれるものが多い。詞は全曲「保坂ねこ」クレジットになっているんだけど、ネットで検索しても出てこないし、いったい何者なんだろう。これまでに出逢ったなかで小山田壮平と並ぶ好きさなんだけど。「若き日の思索のために」(曲名が既にかっこいい) の「くだらない世の中に 覚悟決めてさ/すべての優しさに さよなら」とか、「暮らしの眼鏡」の「気が付けばいつの間にか 移ろいゆく君を見てた」とか。全体的に、世の中に対する諦念と、その諦念を抱えながらも生きていくんだという前向きな姿勢、いわば「前向きな諦念」みたいなものが流れているように思う。それは若者が大人になる時の「達観」にも似ているのかもしれない。
 僕は上に挙げた「若き日の思索のために」と「さよならを教えて」の2曲を聴いた時点で完全に心を撃ち抜かれた。全曲好きだが、やはりこの2曲、そして「暮らしの眼鏡」が愛おしいほどに好き。
 このアルバムは、なぜだか旅先で聴きたくなることが多い。ローカル線やバスの車窓から知らない景色を眺めている時、なんだか無性に聴きたくなる。そして聴くたびに、いつかは「くだらない世の中」に覚悟を決めなければいけないこと、いつまでも若者ではいられないことを考える。

 

最近好きなアルバム

 ここからは番外編。見出しのとおり、最近好きなアルバムの紹介。ここのところシティポップにハマッているので、そちら関係のアルバムが多くなるかな。

南壽あさ子『Landscape』(2012) 

Landscape

Landscape

 


 なんて書いときながら、いきなりシティポップとは縁遠いアルバムを挙げるっていうね。
 この前の「『うたかたの音楽祭 第2幕』in 早稲田2015」で圧倒された南壽あさ子の1stミニアルバム。南壽あさ子は今年の6月に初めてのメジャーアルバム『Panorama』もリリースしてるんだけど、僕は断然『Landscape』のほうが好き。
 南壽あさ子の魅力はなんといってもその幻想的な世界観。静かなピアノの旋律と物語の予感を孕む澄んだ声が聴く者をその世界観に惹き込んで離さない。ほんと、先日のライブでは1曲目の「回遊魚の原風景」から最後の「歌うことだけ」までずっと彼女の世界観にどっぷり浸かり、恍惚としているうちに終わってしまいました。あんなに曲の世界観に惹き込まれたのは初めてだった。

sugar me『Around The Corner』(2015)

AROUND THE CORNER

AROUND THE CORNER

 

 
 こちらも先日の『うたかたの音楽祭 第2幕』にて僕を幸せな気持ちにさせてくれたアーティストのアルバム。ユメオチのヴォーカル寺岡歩美のソロ・プロジェクトsugar meの『Around The Corner』。
 前回の『Why White Y?』が夏のアルバムだったのに対し、今回はジャケットからもわかるように秋冬の雰囲気です。
 聴いた感想としては、相変わらず面白い音楽をやるなあ、と。意欲作だと思います。あと、1曲目が「Rabbit Hole Waltz」というアリスの世界観を思わせる曲なんですが、アルバム全体の雰囲気としてもどことなくそんな感じがする。僕はこの1曲目と2曲目の「Emily」が好きです。ライブでの「Emily」は最高だった。あと6曲目の「To Be Alright」も世界観が濃くて好き。

ルルルルズ『色即是空』(2014)

色即是空

色即是空

 

 
 やっとシティポップっぽいアルバムの登場。ルルルルズの『色即是空』。「色即是空」とは、Wikiによれば「『般若心経』にある言葉で、仏教の根本教理と言われる。「色」は、宇宙に存在するすべての形ある物質や現象を意味し、「空」は、固定した実体がなく空虚であるという意味。』。色即ち是空 (しきすなわちこれくう)、ですかね。すべての物質現象は空虚なんだよ、と。
 さっき紹介したユメオチの作曲担当である行達也がここでもほとんどの作曲を手がけています。そうであるからして必然的にユメオチと曲調は似るんだけど、ヴォーカルと歌詞が違うからか全体としてはそこまで似た感じはない。こっちのがよりシティポップの影響を受けている感じがします。ヴォーカルも寺岡歩美の透明で無垢な声とは異なり、憂いを帯びたちょっと大人っぽい声。どちらも女性ヴォーカルではあるんですが。
 1曲目の「All Things Must Pass」が見事なまでにこのアルバムのコンセプトを表していると思います。僕はこれと3曲目の「街はたそがれ」が好き。意外なことに、アルバムでゆいいつ行達也の作曲ではない曲。ちなみに、2曲目の「Hello It's Me」の出だしはユメオチの「さよならをおしえて」とそっくり。初めて聴いた時は笑いました。

冨田ラボ『Shipbuilding』(2003)


 シティポップといえば冨田恵一、なのかどうかは知らないけれど、行達也が紹介してるんだからそうなんでしょう。
 上のアーティストのところを見てもらえればわかるようにV.A. アルバムなんだけど、すべて冨田恵一の仕事 (もしかしたら編曲のみの曲もあるのかもしれないけど) ということで、とにかくかっこいい。こんなん中高生の時に聴いてたら間違いなくハマッてた。「大人っぽさ」の詰め合わせ。
 ちなみに僕は冨田恵一つながりでキリンジを知りました。ほんとはここでも紹介したいくらい今ハマッてるアーティストの筆頭なんだけど、まだ紹介できるほどアルバムを聴いていないのでここでは断念。とりあえず「Drifter」がいい曲であるとだけは書いておきます。

Shiggy Jr.『is not a child.』(2013)

Shiggy Jr. is not a child.

Shiggy Jr. is not a child.

 


 ルルルルズ、冨田ラボと続いてここでまたちょっと雰囲気が変わります。まあ、編曲のクレジットには行達也がいるんだけどね。
 でも僕がこのバンドを知ったのは行達也つながりではなくて、単純にYouTubeの関連動画から。「LISTEN TO THE MUSIC」を聴いてみて、正直最初はぜんぜん良いとは思わなかったんだけどヴォーカルの声がかわいかったのでついつい何度も聴き、そうこうしてるうちに好きになってた。なんじゃそりゃ。
 今回紹介するのはその「LISTEN TO THE MUSIC」が入ってるアルバムではなくて、1stアルバムの『is not a child.』。
 1曲目の「Saturday night to Sunday morning」と2曲目の「サンキュー」がすごくいい。逆に言うとそれ以外はそこまで聴いてない。だからここに挙げるべきかどうか迷ったんだけど、好きなのには違わないから挙げることにした。
 Shiggy Jr.は曲ごとにいいのとイマイチなのとまちまちなんだけど、 上に挙げた2曲みたいにたまにすごくいいのがある。それと、やっぱヴォーカルの声がかわいい。たぶん意識して歌ってるんだろうなって感じのあざとい可愛さなんだけど、個人的にそういうのに弱いので。


声がかわいいから歌ってる本人までかわいく見えてくるマジック。

南波志帆『水色ジェネレーション』(2011)

水色ジェネレーション

水色ジェネレーション

 


 そしてトリを飾るのはこれ。南波志帆『水色ジェネレーション』。
 正直これまで南波志帆は「アニメ声の人」という偏見があって敬遠してたんですが、この前たまたま耳にする機会があった時に「たぶん、青春。」を聴いて見方が変わりました。いや、確かにそーゆー系統の声であるのは間違いないんですが、それでもなにかしら惹かれるものがあるな、と。
 南波志帆の声は「「マジックヴォイス」と評される」なんてWikiには書いてあって、これはちょっとよくわからないんですが、その同じ文章内で紹介されている西日本新聞の「10代のころにしか感じられない微妙な心の揺れ動き、人との距離感、目に映る景色といったものを真空パックに封じ込めたような音楽」という評言はなんとなくわかるな、と思います。確かにそんな感じ。
 南波志帆のアルバムはカバーアルバムを除けばフル2枚にミニ1枚と3枚リリースされていますが、そのどれもが全曲プロデュースです。作詞・作曲ともにゲスト。ただ、どちらにもけっこう豪華な名前が散見されるので、ブックレットを見てるだけで楽しいです。ちなみにさっき挙げた「たぶん、青春。」は作詞が土岐麻子で作曲が矢野博康。2ndフルアルバムの『乙女失格。』では僕の好きな赤い公園の津野米咲が2曲に詞を寄せているんですが、ブックレットを見るまでもなく曲のタイトルでどれがそうかわかって笑いました。わかりやすすぎだろ。
 話を1stフルアルバム『水色ジェネレーション』のことに戻すと、僕は1曲目の表題曲と3曲目の「こどなの階段」、4曲目の「たぶん、青春。」が好きです。これはこのアルバムに限らず南波志帆の音楽全体に言えると思うんですが、こどもと大人の狭間で揺れる「こどな」の心が繊細に表現されていると思います。曲調はもちろん作曲者によって異なるんですが、それでもやっぱりアニソンっぽいのが多いかな。リズム隊は申し訳程度にとりあえず鳴ってて、基本はシンセが目立ちまくるっていうあの感じ。軽い音が聴きたい時なんかオススメです。

 

おしまい

 どうでしたか? 気になるアルバムはあったでしょうか?
 冒頭にも書いたとおり、今回は万人に勧められるものではなくただ単に自分の好きなアルバムを紹介したので、大いに偏りがあったと思います。まあ、こんな趣向の人間もいるんだ程度に思っていただければ幸いです。
 今回紹介しなかったアルバムでもSing Like Talking『WELCOME TO ANOTHER WORLD』やMy Little Lover『evergreen』など好きなのは幾つもあったんですが、とにかく大好きなアルバムだけを紹介するんだということで迷ったのはすべて没にしました。でも、そういう「好きだけどベスト盤には入らない」みたいなアルバムもいつか紹介できたらなと思います。
 それでは、ここまで読んで下さりありがとうございました。この記事を読んでくれた皆様のフェイバリットアルバムが1枚でも増えますように。