おちゃんせんすぅす

 

 去年からtricot (トリコ) というバンドに注目しているのですが、僕が彼女らの音楽に惹かれたのはこの『おちゃんせんすぅす』を聴いた時からです。
 ただひたすらに「おちゃんせんすぅす」というなんだか間の抜けた言葉を繰り返すこの曲を初めて聴いた時、ふざけてやがる、と笑いが浮かぶのと同時に、えもいわれぬ痛快さを感じたんですね。
 だってこれは、強烈なJ音楽批判なんです。
 歌詞は「おちゃんせんすぅす」という全く意味の無い言葉の繰り返しだけど、この曲、めちゃくちゃ完成度が高くて、ひとつの楽曲として十分に成り立っています。そしてその事実こそが、「イントロ→Aメロ→Bメロ→サビ× 2 + 転調サビ」という型にありきたりな歌詞を填め込んでいるだけの曲 (いわゆる「売れ線」の曲) の厚顔さを浮き彫りにし、これ以上無い痛烈さで批判しているわけです。もちろんtricotにそんな意思があったかどうかはわかりませんが、少なくとも聴いた僕はそう思ったし、歌詞なんかなくても楽曲は成立するんだ、という新鮮な驚きを与えてもらいました。「"ありがとう"って伝えたくて」とか「あなたと笑っていたいから」とか、そんな詞を付すくらいなら歌詞なんて最初から無いほうがいい、というスタンスを、勝手に感じ取ったわけですね。(もちろん同じ歌詞でも使われ方によって善し悪しがあります)
 ちなみにこのtricotというバンド、『おちゃんせんすぅす』のほかにもおもしろい曲がたくさんあって、『爆裂パニエさん』はその筆頭たる曲だし、『おもてなし』とか『bitter』は歌詞が個性的で良いです。『Break』のMVも好きですね。
 これからも注目したいバンドです。