川の畔で寝転んで、東京の空を仰ぐ

 

夕さり時、仕事終わりの川井と待ち合わせて、ぼくらは多摩川をめざした。

 

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河川敷はテントが一張りあるだけで、静かで、暗かった。

ぼくらは川のそばにシートを広げ、腰を下ろした。

 

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たんまり買い込んだ食材は、あっさり食べ尽くしてしまった。

川の畔で食べる寄せ鍋は、想像を絶するうまさだった。

 

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食後、いつもはコーヒーだけど、今回は擬似キャンプということで、ココアを作ってみた。懐中電灯に虫が集まってくるので灯を消して作った。ところどころだまになっていたのは、ご愛敬。

 

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シートに寝転んで仰向けになると、月影に照らされた東京の灰色の空が見えた。星なんか一つも見えなかった。穏やかな風が新緑の梢を揺らし、頬を撫でていった。最初いたテントはとっくに撤収し、河川敷には見渡す限りだれもいなかった。懐中電灯を消すと、何も見えなくなった。人声も走行音も、何も聞こえなかった。時おり魚の跳ねる音だけが響き、静寂をいっそう深くした。

 

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青春だ、と思った。ぼくらはいま、青春をしている。

片づけを終えると、少し長い散歩をして、それぞれの日常に戻った。

GWの街はひっそりとしていて、家に帰り着くまでのあいだ、ほとんどひとの姿を見なかった。自分でもその意味がよくわからないまま、青春だ、青春だと心の中で思いながら、できるだけゆっくりペダルを漕いだ。ぼくは二十五歳になろうとしていた。