バイトいやいや月間⑤⑥

 

3/10 (金)

 

昨日の反省を活かしてバイトまで遊びに行くことにし、前から行きたいと思っていたカフェへ。ランチを食べて食後のコーヒーを飲みながら本を読む。至福。

カフェを出てからはその足で大好きな公園をぶらぶらし、30分ほどたそがれてからバスに乗って町へ戻った。図書館でオルハン・パムクを借り、帰宅。1時間ほど寝てから出社した。充実した一日だった。

明日学力テストの採点手伝ってほしいから早く来てくれ、無理なら授業後残ってやってくれと頼まれる。当然事務給だ。そういや個別指導塾でアルバイトしていたときもこうやって頼まれることがあった。鬱陶しいことこの上ない。

授業後、塾長が会話を試みてくる。なんか長引きそうだったんで「家族が待ってるんで」と言って足早に退社 (お父さんか)。きっと塾長は仕事しか生きがいのないタイプだ。だからあんなに熱心になれるのだろう。こっちはバイトはあくまでバイトと割り切りたい。ので、講師間で腹を割った話をする気はまったくない。もちろん最低限の情報共有は必要だと思うけれど。塾長は別に言葉遣いが荒いわけでも叱ってくるわけでもないのに、ぼくはどうも好きになれない。彼と馬が合わなくて辞めていったバイトがいるというのもうなずける。

ところでマスクをしていけば煙草のにおいがバレないことに気づいた。べつに完全禁煙というわけでもなかろうが、未成年者と接する者としていちおう、ぼくはバイトの前は煙草を控えていた。でも出社前、スーツ以外の服を着ているときに煙草を吸い、塾内でマスクをすればほとんどにおいを抑えることができる。これからどうしても吸いたくなったらこの方法でいこう。

 

3/11 (土)

 

8時に目覚ましで起床。朝飯を食べたあと再び昼まで眠る。ものすごく眠いのに浅い眠りしか訪れず、何度も目を覚ましながら立て続けに悪夢を見る。大学時代の友達と言い争う夢を見てとても嫌な気分になった。

塾長からラインがくる。春期講習前に校舎ミーティングを行うので以下の4日間のうちどうしてもダメな日、時間帯、その理由を教えろと。いらっときた。なんで理由まで教えなあかんねん。そもそも、ぼくはあらかじめ決められた時間割に従って働いている。時間割によって、ぼくは月火木土の週4出社となった。が、それは今月が始まるよりもずっと前に決まっており、だからこそその曜日以外の空いている日にぼくがプライベートな予定を組むのは当然の権利のはずだ。ぼくは金曜日は友達と登山に行く予定だった。唐突に連絡してきてあまつさえ「理由を言え」。これがまだ社員に対してならしかたがないことなのかもしれない。理不尽だとは思うけれど、おそらく社会人とはそういうものだ。しかしぼくはただのいちバイトである。もちろんバイトにだってある程度の責任はあるけれど、あくまで「ある程度」の責任だ。バイトに社員並の勤労を求めるのは間違っている。社員を雇わない/雇えない会社が悪い。

これは研修のときも思った。というのは研修ではほかの校舎に授業見学に行かされるのだが、研修費どころか交通費さえ出ないのだ。ぼくは2つの校舎に見学に行った。ちょうど受験シーズンで、繁忙期にのこのことやってきたぼくは煙たがられた。それだけでもうんざりなのに、やれそこの塾長に模擬授業を見てもらえ、終わったら必ず感想をラインしろだの、次々と面倒な命令が飛ぶ。

それでも研修のときは必要なことだからと折り合いをつけた。が、今回は「理由を言え」と言われてかなりいらっときた。確かにミーティングは重要だろう。しかし「重要だから出席しろ」と迫るのは間違っている。どうしても出席させたいならもっと前の段階で伝えておくべきで且つ給料を出すべきだ (交通費さえ出ない)。

とりあえず返事はしないでおき、夕方まで家で本を読んでから出社した。予習は終わっていたが、採点の手伝いをするために授業より1時間早く行った。頼まれたのは中1〜中3の国英の採点。中1のテストは2種類あった。これが思っていたよりも大変で、全然終わらなかった。授業中も生徒に問題を解かせているときなど折を見て採点したが、けっきょくすべての授業が終わった後も塾に残ってやっていくことになった。だいたい1時間半かかってすべての採点を終えた。

なぜ塾長が嫌いなのかがわかった。いちいち感じが悪いのだ。たとえばぼくが生徒に問題を解かせている間に採点しようとテスト用紙を取りに行くと、塾長が勝手にそれを漁っていて「この右と左で分けているのは何で分けてるの?」と聞いてくる。別に意味はなく、単に置くところがなかったからそう置いていただけだ。そう応えたら「意味の無いことしないでくれる」と言ってきた。そもそも、ぼくはまだ採点のやりかけで、当然終わったらちゃんと番号順にまとめて渡すつもりでいた。それを勝手にいじったのは塾長のほうなのだ。思わず固い声で「まだやりかけだったんで」と言うと無視された。ほかにも書類を探していたときに邪魔だったのか通りすがりにどんとぶつかってくるなど、いちいち感じが悪い。反射的に脛を蹴りそうになった。

帰路につきながら、ぜったい辞めてやる、と思った。

 

ところでこの文章を書いているのは12日 (日) である。本来ならこのエントリも昨夜書くつもりだったが、帰宅したのが23時過ぎだったし、晩飯食べた後風呂にも入れずにベッドに倒れたのでいま書くことになった。一晩が経って、少し冷静になっている。

ぜったい辞めてやる、と昨夜は思ったが、このバイトが短時間で多く稼げるのも事実だった。集団指導は大変なだけあって時給も高い。それにどのバイトだってぜったい大変なのだ。ぼくができそうなバイトで且つ効率的に学費を稼ごうと思ったら、塾講以外に思いつかない。

昨日のライン、「火曜日は別校舎での授業、金曜日はプライベートな用事があるので出席できません」と送るつもりでいたが、ここはも少し大人になることにし、金曜日については「大学の用事があるので」と言っておくことにした。以前、教育実習の時にある教師 (威圧的な体育教師) の言い分に真っ向から反論して揉めたことがあったが (以後実習が終わるまで無視され続けた。ほかの教師にもあいつは反抗的だ、だめだと言い散らしていたらしい)、その話を聞いた友達のSは言ったものだった。「俺だったらかえって扱いやすいやつだって思うけどな。そんなの、内心で軽蔑しながら、表向きは従ってやればいいんだよ」

今回、ぼくは自らの青臭さや子どもじみた顕示欲を抑え、少しだけ大人になることにした。

 

『お疲れさまです。ミーティングの件ですが、火曜日は○○校での授業があるため、金曜日は一日大学の用事があるため出席できません。水曜日、木曜日であれば出席可能です。よろしくお願い致します。』

 

バイトいやいや月間はまだまだ続く。(もういやだ)