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これからのこと

ふがいない院生は空を見た

三ツ峠ならぬ三ツ星山に登ってきた【登山レポ】


9月15日 (火) 晴



AM 6:00

 スマホのアラームが鳴り、言葉にならない唸り声をあげながら起床。若干喉が痛く、病み上がりの体に一抹の不安を覚えるが、今更計画を変更するわけにもいかない。粛々と準備を始める。
 
 この日、僕とSは三ツ峠に登る予定だった。棒ノ折山と迷ったのだが、気温が下がらないうちに標高の高いところに行っておいたほうがいいのではというSの意見により、三ツ峠に登ることになったのだ。三ツ峠は山梨県都留市西桂町富士河口湖町の境界に跨がる山であり、標高は1785mだった。この前の日の出山や陣馬山のおよそ2倍の高さだ。

 三ツ峠には幾つかルートがあって、たとえば三つ峠駅から登るルートはヤマノススメでも描かれ、いまや立派な聖地巡礼コースになっているようだが、僕とSは悩んだ末に河口湖駅からバスで三ツ峠登山口まで行き、そこから登るいちばん簡単なルートを採ることにした。体力面での不安があったことももちろんだが、何よりも日帰りで行くことを考えるとこのルートがもっとも妥当だと思えたからだ。三つ峠駅までは2時間はかかるし、駅からのコースタイムもHPを鵜呑みにすれば片道3時間かかる。日没の時刻を気にしながらさっさと登るのは、やはりちょっと味気ない。
 だから僕らは、河口湖駅からバスに乗ることにした。


AM 6:40

「電車が来ない……」
 僕は駅のホームで立ち尽くしていた。折悪しく人身事故が発生し、電車が遅延していたのだ。僕はNAVITIMEでほかの行き方がないか確認し、どうしようもないことがわかるとSにLINEを送った。
『間に合わないかもしれない』
 Sとは高尾駅ホームに7:45に待ち合わせている。高尾駅47分発の電車に乗らなければ間に合わないためだ。何に間に合わないのかというと、登山口まで行くバスの時間に間に合わないのである。
 十分な余裕を持って考えられたはずのこの計画だが、実は1つだけ大きな不安要素があった。それは河口湖駅から登山口に向かうバスが平日だと9:40発の便しかないことである。つまり、それを逃せばThe End. いちおう調べてみたところ、タクシーだと5000円かかる。こちとら一介の学生。そんな金は払えない。
 バスに間に合わなかった場合、潔く三ツ峠を諦めるしかないのだった。


AM 8:15


「マジですんません」
 午前8時15分。僕とSは高尾駅にいた。……間に合わなかったのだ。ダイヤの乱れた路線は、そう簡単には復旧してくれなかった。僕が高尾駅に着いたのは、予定よりも30分以上も遅かった。
「いや、いいっていいって」
 心優しいSは、小指だけで許してくれた。
 さて。
 まさかこうもbadなtimingで人身accidentがhappenするとはI don't think. 僕とSは途方に暮れた。棒ノ折山に行くことも考えたが、あまりに無計画すぎる。何よりせっかく高尾まで来たのに、飯能に行くとなるとそのアドバンテージがムダになる。高尾から飯能に行くのも、家から飯能に行くのも変わらないからだ。
「……高尾山登っちゃう?」
 だしぬけに、Sが呟いた。
「俺、たぶん幼稚園のとき以来登ってないしさ。別に高尾山でもいいよ」
 実は僕も、高尾山のことは考えていた。いまからいちばん手軽に気楽に行けるとすれば高尾山以外に無いし、僕自身も病み上がりであまり無理はしたくない。正直に言えば、三ツ峠が中止になって少し安堵してしまったほどなのだ。
「高尾山、ワンチャンあるで?」
 迷うようすの僕を見てか、Sが穏やかな顔で囁く。
 これで、僕の迷いも吹き飛んだ。
「……高尾山、行くか!」


AM 8:30

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AM 9:20

 高尾山には1〜6号路があり、僕たちは6号路の「びわ滝コース」を選んだのだが、1時間足らずで頂上に着いてしまった。
「……どうする? 昼飯食う?」
「いや、昼飯の時間じゃねぇだろ」
 まさかこんなに早く頂上に着いてしまうとは思っていなかった。以前登ったのは三年前のはずだが、もっと手応えがあった気がする。僕が健脚になったのか、平日の朝で空いていたからか。おそらく両方だろう。
 しかしまいった。
 昼食を摂るにはさすがに早すぎるし、かといって下山を始めてしまっては10時に高尾山口に着いてしまう。10時に高尾山口に着いても、やることがない。
 僕が悩んでいると、Sが何でもないような口調で言った。
「こうなったら、1号路から6号路まで全ルート制覇する?」
「は?」
 僕は正気を疑った。全ルート制覇 (1〜6号路のほかに「稲荷山コース」があるため、正確には全ルートではないが) って、おまえ……。さすがにそれは、おまえ……

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 1〜6号路、制覇しました。上の写真は高尾山口駅にあったスポーツショップ。マネキンがモンベルを着ていた。
 ちなみに、写真の画質が悪いのはどれもスマホで撮ったため。今回、もともと三ツ峠に行くつもりだった僕は、カメラを構える余裕などないだろうと思ってデジカメを持ってきていなかった。そのため、何枚かSの写真も使わせてもらった。

 なお、行程としては、

高尾山口駅
↓ 6号路
頂上
↓ 5号路
頂上
↓ 4号路
ケーブルカー高尾山駅
↓ 2号路
ケーブルカー高尾山駅
↓ 3号路
頂上 (昼飯タイム)
↓ 1号路
高尾山口駅

 といった感じだ。実際に書き表してみると、いかにアホな行程かがわかる。

 1〜6号路を歩いてみた感想として、沢のそばを歩いて行ける6号路はなかなか楽しいけれど、そのほかのルートは魅力に欠けると思った。特に1号路はほとんどがアスファルトのため、山を登っている感じがしない。


PM 15:30

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 例によって立川に移動した僕とSは、駅前の石井スポーツをひやかした後、ルミネ7階にある「和カフェ yososhi chano-ma」で昼飯 (2回目) を摂った。この「和カフェ」には初めて入ったのだが、そのあまりの洒落乙さに失神するかと思った。中にはもちろん女の子連れとカップルしかいなかった。店内は何から何まで洒落乙に彩られ、靴を脱いでゆったりとくつろげるベッド席もあった。ベッドでは何組ものカップルが自宅のように寝転び、窓に面したテーブルでは女の子連れがケーキを食べ、店員はすべからく原宿にいそうだった。そんな空間に男2人で入り土にまみれたザックを置いてゆったりとしたソファに深々と腰を下ろしたとき、罪悪感で溶けそうになった。
 溶けそうになったとか書いたわりに、僕たちはけっこう長いあいだ店に居座った。居座って何をしていたのかといえば、これからの登山計画を立てていたのだ。話し合いの中ではいろいろな山の名前が出された。今回登れなかった三ツ峠をはじめ、棒ノ折山、谷川岳、石割山……そして、大菩薩峠
中里介山かよ」
 とはSの言葉。中里介山かよ。おそらくもう一生聞くことはないツッコミだろう。
 話し合いの末、その大菩薩峠に登ることに決まったのだが、僕はこの日を境にふたたび風邪がぶり返してしまい、その計画は中止となった。その日の夕方にSさんとSくんを呼んで家でご飯を食べたのは、「週間箇条書 その弐」に記したとおりである。


 さて。ここまで長々と書いてきたが、今回は思わぬかたちで高尾山に登ることになった。久々に高尾山に登って思ったことは、さすがに三ツ星山とだけあって、アクセス、安全面ともにぬきんでているということだ。眺望も、599mと低山にしては良い。
 ただ、登山の楽しみは味わえないかもしれない。登山というより、ハイキングだと考えたほうがいい。また、先述したように6号路 (びわ滝コース) はそれなりに楽しめたが、ほかのコース、特に1号路はアスファルトを歩かされて興ざめなので、オススメしない。
 それと最も重要なことは、僕たちが訪れたのが平日の朝だったということだ。三ツ星山といえど、さすがに混み合うことはなかった。が、それでも山頂ではジェットボイルを置くのにも苦労したくらいなので、土日には相当の人混みを覚悟したほうがいいだろう。あるいは、夜に登ってみるのも面白いかもしれない。高尾山にはムササビがいるというし、1号路ならば足場も心配ないだろう。もっとも、ヘッドライトは要るとは思うが。