景信山、陣馬山を縦走してきた【登山レポ】

縦走(じゅうそう)とは登山の方法のひとつであり、一般的には山頂に立ったあと下山せずそのまま次の山へ向かうことを指す。ルートによっては山頂を重視せず稜線を歩いて行くことも縦走と呼ぶ。下山しないとはいえ数百メートル下り、そこから登り返すことも多いためひとつの山頂を目指すピークハントと比べてより体力、知識、経験が必要となる。(Wikipedia「縦走」より)


 このあいだ御岳山&日の出山を登ったときの友達と、今度は景信山、陣馬山を縦走してきました。

(御岳山&日の出山を登ったときの記事はこちら)

 

 

9月5日(土) 曇時々晴


 僕と友達Sは8時に高尾駅に集合した。家を出たときは曇り空だったが、北野駅を過ぎたあたりからがらっと天気が変わり、青空が広がった。僕は往きの電車の中でsugar meを聴き、中村一義を聴いた。気分を盛り上げるために、はっぴいえんど「夏なんです」を聴いてみたりもした。待ちに待った登山に浮かれていた。

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高尾駅北口。小仏行のバスは2番乗り場。

 さすがに休日の高尾駅とだけあって、ここは渋谷かと思うくらいひとがうじゃうじゃいた。年齢層は渋谷ではなく巣鴨だったが。バス待ちの最後尾がわからなかったので、並んでいる方に聞いた。僕たちの乗る2番乗り場も混雑していたが、陣馬高原に向かう1番乗り場はもっと長蛇の列だった。2番乗り場の列がバス2台分だったので、1番乗り場のほうはきっとバス3、4台分くらいはあったのではないだろうか。後ろに並んでいたひとに聞いた話だと、僕らのように陣馬山を目指すひとだけでなく、高尾山を登るひとたちもここからバスに乗るらしい。そのせいで混雑しているのだった。おそるべしミシュラン☆☆☆

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小仏バス停までは20分程度。ちなみに、「こぼとけ」です。僕はバス内でSが指摘してくれるまでずっと「こぶつ」と読んでいた。

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ちゃんと標識がある。小仏峠までは確か2.5km。

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ここが登山道の入口。さてどんな道かと見れば、

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さっそくキツそうな階段が。

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ブレてるのは、肩で息をしていたから。ちなみに、このあたりで汗に耐えかねて眼鏡を外した。「抽象画の世界だ」と言ったらSが「点描みたいな?」と言ったので、「そうそう、ジョルジュ・シーラ」と恰好をつけてみたところ、「スーラだろ」と言われ撃沈。(Sは大学で美術史を学んでいるのだった)


 先に全体の感想を言ってしまえば、今回の行程でいちばんキツかったのはこの景信山までの上りだった。けっこう急だし、なだらかな道がなくひたすら上りなので、ペース配分を考えないと心肺にくる。僕はこのペース配分を間違えてどんどん先へ上っていってしまったため、だいぶ体力を削られてしまった。「お先にどうぞ」と道を譲ってくれたひとにけっきょく抜かれる、みたいな情けない事態にもなった。耐えきれず休憩を申し出たのち、Sに先に行ってもらうようにしてからは楽になった。Sはペース配分を弁えていた。

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ただひたすらに歩く。ここらへんはほとんど会話なし。

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景信山山頂727m。八王子市だそうです。

 景信山山頂には茶屋があり、ジュース、水、酒、カップラーメンなども売っていた。ちなみにここまで上りっぱなし。やっと一息つけるという感じだった。僕はここでアクエリアスを買い足した。

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山頂から八王子市街を望む。

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その反対側。天候が良ければ富士山が見えるとか見えないとか。


 さて、少し休んだら、次は明王峠へ。

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明王峠まで2.3km。陣場山 (標識だと「馬」ではなく「場」になっている) まで4.2km。

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景信山を越えれば、あとは比較的なだらかな道が続く。

 景信山までの上りがキツくてほんとにどうなることかと思っていたが、そこを越えてからはだいぶ楽になった。たぶん、ひとつ山を登ったことの達成感も後押ししてくれていたのだと思う。このあたりから喋る余裕もできて、ポケモンの話などしていた。ボーマンダが意外とダサいことや、フライゴンがチャーミングだといった話をした記憶がある。僕は筋金入りの面倒くさがりで、ポケモンも殿堂入りしたのちは遊ばなくなるのだが、そのことをSに言うと「ポケモンの楽しみ方を間違っている」とあきれられた。ちなみにSは相手をこんらん&どくどく状態にしてさらにやどりぎのたねを蒔くのが好きならしい。こいつとは勝負したくないなと思った。

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見てのとおり明王峠。ここまで来ればあと少し。

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明王峠から陣馬山山頂までのあいだに見かけた、直角に折れた木。


 そしてなんだかんだ歩いて、(疲れていたので、ほとんど写真を撮っていなかった)

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山頂へ!

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かながわの景勝50選 陣馬山

 驚いたことに陣馬山山頂には茶屋が3つあった。ふつうのテーブルはすべて埋まっていたため、僕たちは「○○茶屋」という茶屋のテーブルを使わせてもらうことにした。

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テーブル代の柚子シャーベット300円。(このほかノンアルコールビール300円も買った)

 さて! さっそく待ちに待った山頂カップヌードル&コーヒーを楽しむときである。僕はザックの中からジェットボイルを取りだし、ガスカートリッジを取り付けてつまみをひねった。……しかし、
「消して、消して!」
 着火した途端、茶屋のおじさんが飛んできて怒られてしまった。
「ここに書いてあるでしょ! 火をつけちゃ駄目だって!」
 おじさんに示された「ここ」は、テーブル席を囲んでいる柱の上部だった。確かに、小さい字ではあるが使用禁止の旨が書かれている。
 内心で「こんなん気づくか!」と思いつつも、非はこちらにあるので頭を下げた。おじさんは「まったくこれだから素人は」と言わんばかりの態度で陣馬山一帯では火の使用が禁止であること、ここらは山が連なっているため火事が起きたら大変であること、実際にこれまでに幾度か事故が起こったことなどをまるで台本に書いてあるせりふを読んでいるみたいにつらつらと語った。レンタカーで車を借りるときの注意事項の説明よりも執拗に語った。おじさんが唾を飛ばしているあいだ、僕はひたすらに愛想良く謝っていた。おじさんはやっと大演説を終えると、茶屋に置いてある黄色い板の上でなら火の使用が許されていることを不服そうな口調で語った。僕はさっそくその板を借りてきて、テーブルの上に敷いた。

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仕切り直し。

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最高かよ。

 初めて外でジェットボイルを使ったわけだが、バーナーの音が思ったよりも大きく、まわりの注目を集めてしまうのが少し恥ずかしかった。が、初めての実践でも簡単に沸かすことができたし、沸騰するまでの時間も1分足らずと短かったので、利便性には優れていると思う。

 そして、山頂で食べるカップヌードルは、やっぱりうまかった!

 さらにさらに、

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山といえば、コーヒー!

 ジェットボイル+カップヌードル+カップ×2+水1L (カップヌードル2人分+コーヒー2人分) を持ってくるのは少々骨が折れたが、がんばって重い荷物を背負ってきた甲斐はあった。コーヒー after カップヌードル at 山頂*1は、ほかでは味わうことのできない満足感があった。おかげですっかりくつろぎ、予定の1時間20分を遙かにオーバーして2時間も休憩してしまった。日の出山のときと同様、山頂では人生について語り合った。

 僕とSが話しこんでいるあいだ、何組かの登山客が少し前の僕らと同じようにジェットボイルやコッヘルで湯を沸かし、茶屋のおじさんに注意されていた。登山客はみんな年配の方だったので、茶屋のおじさんは僕らに大演説をぶったときよりもずっとやんわりとした口調で「すみません、ここは火の使用が禁止なんです」と説明し、自ら走って例の板を取りに行っていた。……

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栃谷尾根を下る。

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突然の茶畑。

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こういう土地で暮らすのは、どんな感じなんだろう。

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温泉を目指すなら、このあたりが分岐点。

 陣馬山付近には「陣馬の湯」という温泉地帯があり、そこには「陣谷温泉」「陣渓園」「姫谷」の3つの温泉がある。藤野駅から電車に乗るなら、「陣谷温泉」がいちばんアクセスが良い。僕らは上の写真のあたりで「陣谷温泉」に電話をかけ、アポを取ってからそこへ向かった。いずれの温泉も宿泊施設に付属しているため、宿泊客が多いときは日帰りの入浴は断られるらしい。なので、特に土日は、行く前に電話で確認したほうが良いだろう。

 

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提灯がいい感じ。

 「陣谷温泉」は入浴料こそ1000円と少し高めだったが、それでも納得できるくらい素晴らしい温泉だった。浴槽は檜風呂1つだけなのだが、僕らが入ったときはほとんど貸し切り状態で、窓から見える山の緑を眺めながら1時間半くらい浸ってしまった。湯は別段これといった特徴があるわけではないのだが、檜の浴槽と相まって昔ながらの温泉といった感じで、とても気持ち良かった。開いている窓から涼しい風が吹き込んでくるため、露天風呂感もあった。なお、湯は熱め。

 温泉に浸かりながら、僕とSは音楽の話をした。Sはクラシックと洋楽に詳しく、覚えきれないほどのアーティストを勧めてくれた。あまりにも多くのアーティスト名を聞いたため、最後のほうではのぼせてきたこともあって1つ新しい名前を聞くごとに最初に聞いた名前がこぼれていった。とりあえず、ずっと聴いてみたいと思いながら未だ聴いていなかったピンク・フロイドの『狂気』を聴いてみたいと思う。僕はオフコースの話などした気がするが、あまり詳しくは覚えていない。

 あまりに湯が気持ち良かったため浸りすぎ、15時すぎに入ったはずが上がったときには17時前だった。女将さん曰く17時13分に陣馬登山口バス停から藤野駅行のバスがあるとのことで、ふつうなら温泉からバス停まで徒歩20分はかかるそうだったが、僕とSは諦めずに走り出した。温泉から上がったばかりなのにどうして俺は全力疾走なんかしているんだろうと思いつつ、先を走るSを追って車道を駆け下りた。
 どうにか間に合った。

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藤野駅ホームから見えた謎のラブレター。

 陣谷温泉から藤野駅までは、歩いたら1時間はかかるだろう。バス停までちょっと距離があるものの、それでも乗ったほうがずっと楽だ。そのため、もし登山の帰りに温泉を利用したいという方は、あらかじめバスの時間を確かめておくことをおすすめする。僕らは、たまたま運が良かった。

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 さて。ここまで長々と書いてきたが、初めての縦走は、とても充実度の高いものとなった。景信山と陣馬山の縦走は景色も良いし、難易度もそう高くはないので、僕らのように初めて縦走をする者にはうってつけだった。小仏峠から景信山まではけっこうハードだが、ペース配分に気をつけてちゃんと休憩を取りさえすれば、多少時間はかかっても問題なく上ることができる。景信山から明王峠を経て陣馬山に向かう道も山の上のほうを歩いている感じがして楽しいし、それに何より1ぺんに2つの山頂を制覇するのはふつうの登山にはない達成感がある。高尾山や御岳山の登山では物足りなくなってきたという方には、縦走の入門としておすすめだ。なお、今回僕は下りに限りTグリップのストックを使ったが、ストックがあるのとないのとでは脚に対する負担がぜんぜん違ったため、足腰に自信が無い方は持っていったほうが良いと思う。また、Iグリップストックなら歩く推進力にもなるので、体力に自信が無い方にはそちらをおすすめする。実際、当日に見かけた登山客のほとんどはIグリップを使っていた。


 もともと、僕がザックを買ったのは旅行に使うためだった。それなのに、たまたま友達と登山に行くことになったのをキッカケに、どんどん山に魅せられている自分がいる。登っているときはつらいのに、帰ったらまた行きたくなる。ちょっと自転車の魅力と似ている。
 予定が合えば、また9月中にSと登山に行こうと話している。今から楽しみでしかたがない。

 さあ、次はどの山に登る?

*1:我ながら、あまりにアホすぎる表現に泣きたくなった。