御岳山、日の出山に登ってきた【登山レポ】

 昨日は大学の友達と日の出山に登ってきた。おかげで今日は下半身が筋肉痛でバキバキである。猫背のせいか、腰にもキた。
 僕と友達Sは9時に御嶽駅に集合した。月曜の朝にもかかわらず空いた中央線で僕はオザケンを聴き、長澤知之を聴いた。気分は「はぐれ雲けもの道ひとり旅」だった。はぐれる余地がないほど雲は空を覆い尽くしけもの道はともかくとしてもひとりでも旅でもなかったが、気分はそんな感じだった。
 JR青梅線は聞いたことのない駅名ばかりだった。たとえば「河辺」。
 何て読むかわかりますか? 

「カベ」ですよ「カベ」。ここに住んでいる人は友達に家の場所を説明するとき、「俺、カベに住んでてさあ」と言うのだろうか。ちょっと江戸川乱歩っぽい。

 

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9時、御嶽駅に着く。

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御嶽駅からの眺め。

 バス乗り場は駅を出て信号を渡り、左に曲がったところにあった。僕とSは既に停まっているバスに急いだ。

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バスでケーブル下の滝本駅へ。ここからケーブルーカーに乗る。

 今回は日の出山に登ることを目的にしていたため、御嶽山駅まではケーブルカーに乗った。ケーブルカーは凄かった。まさに文明の利器といった感じだった。最大傾斜25度でぐんぐん標高を稼ぎ、乗客に「登山とは何か」について深く考えさせた。

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御嶽山駅から武蔵御嶽神社までの道はこんな感じ。
曇りの日の朝だったためか、深い霧に包まれていた。

 ケーブルカーから降りた途端、しんとした冷たさがあたりを包んだ。ケーブルカー内のアナウンスによると、このあたりの気温は22℃だったらしい。僕とSは「熊に襲われたらどっちが囮になるか」という話をしながら武蔵御嶽神社に向かった。

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武蔵御嶽神社。本殿は工事中だった。

 御嶽山駅から20分くらい歩くと、武蔵御嶽神社に着いた。ここまでの階段がけっこう辛くて、やっぱ神社は一筋縄ではいかないなと思った。
 参拝した後、御岳山の山頂はどこなんだろうと案内図を見ていると、ベンチで休んでいたおじさんがこの武蔵御嶽神社が御岳山の山頂なのだと教えてくれた。そこで日の出山登山道の入口まで引き返し、日の出山に向かった。

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日の出山登山道に入る道。

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少し進むと、こんな洒落っ気のある標識も。

 日の出山山頂は902mだが、ケーブルカーでだいぶ標高を稼いでいるのでそんなに上っているという感じはしなかった。登山というよりもハイキングに近いかもしれない。この日はほとんど登山客がおらず、ひとりでは閑かすぎたかもしれないが、ふたりだったので淋しさを感じることもなく、存分に山の魅力を味わうことができた。僕はつねづね高尾山に行く人間の気が知れないと思っているのだが (だってあそこまで人が多いともはや都会と変わらないではないか)、この日の日の出山はほんとうに閑かで良かった。

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時おり虫に襲われながら、

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歩く、

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歩く、

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歩く。
そして……

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山頂へ!

 登山道に入る分岐点から45分ほどで着いてしまった。その間、緩やかな下りと上りが繰り返されるだけで特にキツいところもなく、文弱の僕たちでも少し物足りないくらいだった。しかし山頂からの眺望は素晴らしかった。僕のデジカメ写真だとわかりづらいかもしれないが、こんな曇り空でも東京の街が遠くまで望め、西の方角 (下写真) には大岳山をはじめとする山々が見えた。晴れた日には、東京方面にはスカイツリー、西の方角には富士山が見えるらしい。

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これぞ山といった感じの景色。黄色の揚羽蝶が3匹つかず離れずに飛んでいて、Sが3Pだと言っていた。そのうちに蜻蛉も一匹混ざったので、「倒錯者だ……」とふたりしておそれおののいた。アホ……

 山頂の東屋で昼飯にした。僕はコンビニおにぎり3個、Sは弁当を持って来ていた。コッヘルでラーメンとコーヒーを作っているおじさんがいて、「くそう、次は俺も絶対ラーメンを食ってやる」と思った。
 飯を食いながら、就活の話や人生の話などした。死生観についても語り合った。こんな話ができるのはSだけなので、とても楽しかったし、いろいろと感じ考えさせられた。Sはふしぎなやつだ。Sと話すたび、僕なんかよりもずっと小説を書くのに向いているんじゃないかと思う。詳述はしないが、ぼーっとしているときにふと死を感じる話とか、オール明けの朝日を見たときに死を感じる話からは彼独特の感性をうかがい知ることができた。

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山頂で休んだ後は、「つるつる温泉」を目指し下山。

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つるつる肌の女性が描かれた標識。

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下山中に見かけた尾根。写真ではわからないが、ひとり歩いている人がいた。

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こんなふうに、ちょくちょく標識があるので安心。

 上りよりも下りのほうがキツかった。平坦な道がほとんどなくひたすら下りだし、道も上りのときと比べると少し険しい気がした。そして、

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歩いても、

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歩いても、

 辿り着かない。
 ちょくちょく標識が現れて温泉が近づいている感を演出するくせに、温泉どころかぜんぜん山から抜けられないし、下るごとに蝉の声が強まっていって (そういえば上では声を聞かなかった)、耳元に襲来する虫の数も多くなった。
 写真を撮っておかなかったのが悔やまれるのだが、だいぶ疲れてきた頃に「温泉まで2.5km」という愛想もそっけもない標識が現れて、「2.5km!?」と僕たちを驚愕させた。
 やがて車道に出て、それからは田舎道を映画や音楽の話などして歩き続けた。僕はぜんぜん映画を見ないので、Sにいろいろおすすめの作品を教えてもらった。「どんなのが好きなの」と聞かれ「ジ、エクストリーム、スキヤキ」を挙げようとしたが、うまくあらすじを説明する自信がなくて「もらとりあむタマ子」と答えた。「どんな話?」「えっと……前田敦子が就職せずに、田舎に帰って……その……だらだらする話」けっきょくできなかった。音楽では、中村一義をすすめておいた。
 つるつる温泉はいつまで歩いても現れなかった。いつの間にか標識も見なくなっていた。2.5kmどころか、実感としては5kmは歩いていた。さすがにおかしいと思い、Sがグーグルマップを見た。つるつる温泉は遙か後方に過ぎていた。気づかずに通り越していたのだ。温泉に行くには2kmの道を引き返さなければならなかった。つるつるになるのはそう簡単なことじゃなかった。実は車道に出てからこの事態に至るまでの間に僕は1度だけグーグルマップを見ていたのだが、方向音痴なので温泉の位置が後方にあることに気づけなかったのだ。痛恨のミス。神様からおまえはつるつるになるなといわれている気がした。だが僕は諦めなかった。ここまで歩いた以上、どうしてもつるつるお肌になって帰る必要があった。あたりを見渡すとたまたま近くにバス停があり、たまたま1時間に1本のバスが10分後にあった。神は僕たちを見捨ててはいなかった。

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というわけで温泉に着いた。

 つるつる温泉の湯はつるつるだった。なんだか小学生みたいな文章だがほんとうにそうとしか言いようがないのだ。露天風呂はイマイチだったがつるつるな湯は気持ち良かった。途中、全身に刺青をした二人組が入ってきて怖かった。「おい、何見とんじゃ」と今にも話しかけられるのではないかとびくびくした。いつそう言われても良いように「いや、かっこいい刺青だなと思って」とか「あまりに見事な絵柄だったので」とか少しでも相手に気に入られそうなせりふを湯船に浸りながら108通りほど考えた。
 温泉から出た後は恒例の瓶詰め牛乳を飲み、温泉から出発するバスで武蔵五日市駅に行き、立川に戻った。

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温泉と武蔵五日市駅を繋ぐバス青春号。

 立川に戻った後は、ルミネで服を見たり、本屋で旅行雑誌をめくったり、カフェで次の計画を立てたりした。次回は千葉に星を見に行くことに決まった。今から楽しみだ。その前に卒論がんばろう。

 初めて登ったが、日の出山はケーブルカーを使えばほとんど標高差を意識せずに登れるし、道の安全度、山頂からの眺望も良いので初心者にはかなりおすすめだと思う。初心者の僕が言っているので間違いない。都心から手軽に行き、手軽に登ることができて、902mと低山でありながら (といっても、高尾山より300mは高い)、素晴らしい景色を望むことができる。山に行ってみたいけれど体力が不安、という方がいれば日の出山はうってつけだろう。逆にハイキングでは物足りないという方は、ケーブルカーを使わずに御嶽山駅まで歩いて登れば、それなりの充実感を得られるのではないかと思う。