熊がいたよ、と佐伯さんはいったのだった。お盆も終わるころ、ぼくと川井は重いザックを背負って奥多摩湖畔のバス停に降り立った。南側から樹林帯を登る、鴨沢ルートと呼ばれる道程で、ぼくたちは雲取山に登り、山頂の近くの山小屋で一泊する予定だった。実…
ある日、授業を受けるために大学へ行くと、一面の雪野原になっていた。 つい昨日まで大学棟があったはずの場所が真白に染められ、初冬の清澄な日射しを受けた雪が眩しく照り映えている。高高と突き立っていた三十三号棟が無くなったためか、空がやたらと広い…
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